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長引く痛みの原因は、血管が9割

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奥野先生の論文2 カテーテル治療の最初の論文

2013年の7月にJournal of Interventional Radiologyという雑誌に出した私の論文です。

これが「運動器の痛み」に対してカテーテル治療をしたという世界で最初の報告です。

保存療法(手術以外の方法)で良くならなかった腱炎や付着部炎(スポーツ障害の多くはこのグループに入ります)の患者さんを対象にしています。

要約をご覧下さい(専門用語で書いていてごめんなさい)





論文要約


タイトル:保存療法に抵抗する腱炎および付着部炎に対する、経カテーテル的動脈塞栓療法の安全性と有用性


Introduction(導入)
腱炎、付着部炎は日常診療でよくみかけるありふれた疾患であるが、なぜ痛みが生じるのかは解明されていない。最近の研究から異常に増殖した血管とそれに付随する神経が痛みの原因であるという仮説がある。我々はこの仮説をもとに、保存療法に抵抗する腱炎や付着部炎に対して、異常に増殖した血管を標的とした経カテーテル的動脈塞栓術を施行した。塞栓材としてはイミペネム・シラスタチン(IPM/CS)0.5gと造影剤5ccとの混濁液を用いている。IPM/CSは抗生物質として認可されているが、その難容性の性質から、塞栓物質として用いられることがある。IPM/CSは直径10〜60μmの血管に塞栓を引き起こすと考えられている。

Materials and Methods(方法)
倫理委員会の承諾のもと前向き臨床研究を行った。腱炎、付着部炎に特徴的な身体所見を有する患者で(部位は問わない)、保存療法を3ヶ月以上施行して、かつ患者の自覚症状の指標であるVisual Analog Scale スコア(VAS)>50mmの中等度から重度の疼痛を訴える患者を選択基準とした。関節リウマチ、悪性腫瘍、感染症を持つもの、重度の動脈硬化症のあるもの、手術をしているものを除外基準とした。
合併症の有無およびVASの変化を評価項目とした。

Results(結果)
7人の患者を治療した(内訳 アキレス腱付着部炎1例、膝蓋腱炎1例、肩関節腱板炎2例、外側上顆炎1例、腸脛靭帯炎1例、足底腱膜炎1例となっている)。
全例において疼痛部に異常な新生血管を認めた。皮膚潰瘍や組織の壊死なども含めて重篤な合併症を認めなかった。治療後1日、1週間後、1ヶ月後、4ヶ月後において治療前と比べて優位にVASの低下を認めた。

Discussion(考察)
本治療によって除痛が得られるメカニズムは不明であるが、異常な血管への血流を遮断したことが除痛効果と関係していると考察している。IPM/CS自体には局所麻酔剤のような鎮痛効果はないと思われる。にもかかわらず患者は塞栓物質を投与した数分後に疼痛の改善を述べることがあった。このことは治療によって遮断された血流と痛みとが関係性を持っていることを示唆すると思われる。また、本研究で得られた血管撮影所見からは腱炎や付着部炎の異常血管において、動脈撮影の比較的早期に静脈が描出される現象を認めた。このことは腱炎や付着部炎で増殖した血管の血流がShunt成分を含み、必ずしも末梢組織に分布し栄養供給に寄与しているわけではないことを示唆している。正常な腱や付着部の組織は血管密度の乏しい(しかし秩序だった)組織であることが知られている。本治療では腱炎・付着部炎においての秩序の乱れた異常血管を正常化していることもメカニズムの一つとして考えられるのかもしれない。
本研究は症例数が少なく、観察期間も短い。今後の更なる研究が必要とされる。

奥野先生の論文2 カテーテル治療の最初の論文

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