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長引く痛みの原因は、血管が9割

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奥野先生の日本語原稿 「エコーを使った痛みの血流評価」 前編


はじめに

橈骨動脈に直径1mmの細いチューブ(カテーテルと呼ぶ)を挿入し、動脈の中を進めて、脇の下にある腋窩動脈まで達している(図1a)。カテーテルの先端を肩関節の栄養血管まで進める。造影剤というX線に映る液体を流し始めると、モニター画面に血管像が映し出される(図1b)。腱板疎部にわずかな異常血管が見つかった(図1b矢印)。肩関節周囲炎の患者に特徴的な所見だ。カテーテルから塞栓物質をごく少量だけ投与する。投与数分後にもう一度血管を撮影する(図1c)。血管像は正常なパターン(図1d)に近づいた。


奥野先生の日本語原稿 「エコーを使った痛みの血流評価」 前編


痛みの塞栓治療

私は現在カテーテルを用いた痛みの治療に取り組んでいる。より厳密に言うと、“異常な血管とそれに伴う神経が痛みの原因である”という仮説のもとに、動脈内に位置させたカテーテルの先端から微小な粒子を投与して、標的となる異常血管を塞栓させる(詰まらせる)ことで疼痛や炎症を改善させる治療に携わっている。異常血管があるかないかと、痛み症状との間に非常に強い関係を見出している。

冒頭の患者は肩関節周囲炎で安静時痛と夜間痛のある50歳女性の患者である。夜間痛は治療した日の夜から著明に改善している。治療1ヶ月後には疼痛および可動域は大幅に改善し、肩に症状があったことを忘れて生活している。

ここで言う「異常血管」はどんな疾患で存在するのかというと実に多くの疼痛疾患で認められる。腱炎および付着部炎1)、肩関節周囲炎2)、難治性の肩こり、変形性関節症、慢性腰痛、Anterior knee pain、骨折後に遷延する疼痛、人工関節置換術後の残存痛など、さまざまな運動器の疼痛疾患を治療対象としてきた。カテーテルから投与する塞栓物質の種類やサイズを工夫しており、これまでの治療で虚血の合併症を経験していない。

異常血管はエコーで見えるか?

異常な血管をターゲットとするため、それを術前に評価したい。このため超音波装置のカラードップラ機能を用いて観察している。カラードップラ機能は観察範囲内の動体を検出できるため生体では血流を観察することができる。この機能を用いて異常血管を検出している。ところが冒頭の患者では(強い痛みを訴えていたが)異常血管は比較的少なく、エコーでは見えなかった(図2)。正確に表現すると当院の装置および使用条件において検出されなかった。もちろん術前にあらかじめ観察される場合もある(図3)。異常血管の量は患者によってさまざまであり、非常に多くの血管ができていることもあれば、ほんのわずかな異常血管が数年にわたって患者を苦しめるケースも少なくない。

奥野先生の日本語原稿 「エコーを使った痛みの血流評価」 前編



図4は左肘痛が4年続いているゴルファーのケースである。2年前に関節鏡下滑膜切除術を受けたが症状は残存していた。再現性のある圧痛を総指伸筋の付着部から筋腹にかけて認めた。エコーでは異常な血流信号は検出できない(図4a)。
塞栓前の血管撮影では総指伸筋の筋腹の圧痛部に一致して異常な血管を認めた(図4b)。塞栓物質を投与して再度血管を撮影し、異常血管への血流が低下したのを確認した(図4c)。治療1ヶ月半後には左肘の痛みを忘れてプレーできるレベルまで改善している。


奥野先生の日本語原稿 「エコーを使った痛みの血流評価」 前編

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